高橋大輔は、さらに進化した姿を魅せてくれるはずだ。世界有数の「踊れる」スケーターが示す道

VICTORY によると。

2018年7月、現役復帰を表明した高橋大輔。羽生結弦、宇野昌磨が日本男子フィギュアの黄金時代を築いている今、彼の復帰は何をもたらすのだろうか? あの頃と変わらぬ姿勢と、あの頃とは異なる高橋を取り巻く環境。天性の才能と、新たに得られた経験。高橋はきっと、より進化した姿を見せてくれるに違いない――。(文=沢田聡子)
「踊る」ことに天性の才能と勘を持つ高橋大輔
高橋大輔は、世界でも有数の「踊れる」スケーターだ。音楽を氷上で表現することにおいて、観る者を圧倒する才能を持っている。

個人的には、2012年1月にアイスショー『スターズ・オン・アイス』(代々木第一体育館)で滑った『ロクサーヌのタンゴ』が忘れられない。2005-06シーズンのショートプログラムをあえて選んだ背景に、過去の自分にはできなかった滑りを見せられるという確かな自信を感じた。よく知られている曲だけに、クライマックスに向かうにつれ観る者の期待は膨らむのだが、高橋の滑りはその期待を上回り続けた。スケートの一蹴りが素晴らしい伸びをみせ、起伏に富んだメロディを従えて滑り切った高橋は、会場を完全に支配する。氷から遠く離れた2階の観客席までダイレクトに届く情感は、自然と立ち上がって拍手したくなる濃密なものだった。神懸かり的という言葉を使いたくなる演技には、なかなか出会えるものではない。

2014年ソチ五輪のフリー、深く心にしみる『ビートルズ・メドレー』を最後に競技会から去った高橋は、2016年にはダンスイベント『ラブ・オン・ザ・フロア』でダンサーとしても舞台に上がっている。また、歌舞伎とフィギュアスケートがコラボレートした『氷艶HYOEN2017~破沙羅~』では、板張りの舞台でヒップホップ調の振付を踊って強烈な印象を残した。氷上ではなくても、たった一人で満場を魅了することができるパフォーマーであることを示したのだ。斬新かつ歌舞伎の世界にもはまる振付を手がけたのは、ダンスパフォーマンス集団「東京ゲゲゲイ」だが、依頼したのは彼らのファンであるという高橋自身だったそうだ。高橋は「踊る」ことについて天性の才能と勘を持っているだけでなく、多方面にアンテナを張り吸収しているのだろう。

最初に高橋がヒップホップを踊ってみせたのは、現役時代の氷上だ。当時高橋のコーチでもあったニコライ・モロゾフが振り付けた2007-08シーズンのショート『白鳥の湖 ヒップホップバージョン』は、フィギュアスケートの新しい世界を切り開く革新的なプログラムだった。ヒップホップ特有の激しく上下する動きと、フィギュアスケートの“滑る”動きを見事に融合させた高橋の演技は、伝説的なものとなっている。野心的な振付家であるニコライ・モロゾフも、高橋大輔というスケーターがいなかったらこの作品を世に送り出すことはできなかったかもしれない。

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